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はじめに

 静岡県は、江戸時代の頃には駿州・遠州・豆州といわれた個性ある地域にて構成されていましたが、明治の廃藩置県の際に合併をして現在の静岡県となりました。駿州の中核都市は駿府といわれた今の静岡市、遠州のそれは浜松市、豆州では現在の沼津市付近に当たります。当時、それぞれの地域では個性ある地域文化を花咲かせていました。例えば、駿州では、徳川家康隠居城である駿府城に隣接する浅間神社造営に際し、優れた名工・図工を全国各地から招聘し、その優れた技術が今日の静岡市の伝統工芸のルーツになったと云われます。また、浜松を中心とした遠州では、昔から織物産地として有名であり、その中から優れた伝統工芸織りも誕生しました。

 現在、静岡県は近代工業においても、自動車、楽器、家具、精密機械などの地場産業を発達させており、その温床となったのは、こうした伝統工芸であったというのは、あまり知られることはありません。例えば、自動車製造は静岡県の有力な地場産業ですが、そのルーツは伝統織物であり、それが自動織機に変化し、その技術を生かして自動車産業につながったという流れがあります。また、もう一つの地場産業である家具製造は、浅間神社造営の際の名工の技術を伝承したものでもあります。したがって、静岡県の伝統工芸品は、その作品が優れているというにとどまらす、静岡の産業のルーツでもあるという側面を持っております。

 今回、全国に誇る静岡県内の伝統工芸品を多くの皆様に紹介し、その優れた技能、技術を目にしていただく機会を本会で実施できたことに大きな喜びを感じます。ぜひ、日常品として、あるいはインテリア品として、日常生活の中でご利用いただければ望外の喜びでもあります。

しずおかの伝統工芸品とは

 静岡県は東西に長い地形を持っており、ご承知の通り東海道五十三次といわれる宿駅の多くが静岡県に存在しました。これは東西交流の要衝として古くから文人・墨客が静岡を訪れ、その地に伝統工芸品の萌芽を広めたということにつながります。

 静岡には実に多彩な伝統工芸品があり、優雅で雅やかな雛具・雛人形・蒔絵・漆器、自然の風合を生かした織り・染物、日常雑貨の価値を持ちつつ洗練された美しさを有する陶器・指物・各種木工芸製品等、それぞれが伝統技法にそって現在も脈々と受け継がれております。

 今回、静岡県郷土工芸品振興会の支援により、郷土が育んだ工芸品の数々を全国、あるいは世界に情報発信できる機会ができたことを心から喜んでおります。もちろん、日本全国には優れた工芸品が多数存在しておりますが、自然景観に恵まれ、人情味豊かな静岡の工芸品の数々を当サイトを通じて、身近に感じていただければ幸甚です。